『ネオンサイン・アンバー』おげれつたなか
昨年、全然BLを読みませんでした。なので、今年は、今まで読んでいなかった作家さんの本も積極的に読むぞ!と誓った新年。
さっそく新しい作家さんの本を買ってみました。
おげれつたなかさん。新しい作家と言っても、それはあくまでも私の中で、デビューされてから何年かたってます。私も名前は前から知っていましたが、なかなか読む機会がなく。
たまたまネットで試し読みしてみたら面白かったので、今回は書店で買ってみました。
※ネタバレ嫌な人は引き返してください。
〈あらすじ〉※カバー裏を参考にしてます
クラブにスタッフとして勤める緒方は、客のサヤと出会う。サヤはいつも違う女性を連れているギャル男。最初は苦手なタイプだったが、ひょんなことから朝食を毎朝作ってもらうことになる。サヤと過ごすにつれ、今まで知らなかった一面を知り、だんだん惹かれて行くが…。
〈感想〉
この話の何が肝かというと、ギャップ萌えだと思います。
ギャル男受けってBLには珍しいですよね。好き嫌いが分かれる容姿だからかな。まあ、私も正直なところ、実際にそばにギャル男がいても、自分からは近寄らないタイプです。やっぱり、チャラチャラしてそうだし、自分とは違う人種だと感じてしまう。偏見ですが。だから、最初、緒方がサヤを苦手だと感じるのもわかります。
そんなサヤですが、実際に喋ってみると、以外といい奴なわけですよ。しかも、その容姿に似合わず(偏見)作る朝食は美味しい。更に、思っていることが顔に出にくい緒方の顔を見て、「うまそうな顔してたもん」なんて無邪気に思っていることを当てたりする。誰にも理解されなかった部分を理解してくれる相手には「ドキッ」としますよね。
しかも、なんか幼くて危なっかしい。知れば知るほど意外性があって、もっと相手を知りたくなる。そんな気持ちが丁寧に描かれています。
そして、肝その2。この作品を切なくさせているのは、同性を愛する葛藤が描かれているところ。
サヤのことを「かわいい」と思い、惹かれていった緒方はサヤとSEXしようとします。でも、サヤの裸を見て、やはり女性とは違うことを思い知る。行為に及べない緒方を見て、サヤは「キモかったのは、俺の方じゃん」と自虐します。
サヤには、同性の先輩に告白し「気色悪い」とふられ、周りにホモだと言いふらされた過去があったのでした。
とっかえひっかえ女性に手を出すのは「キモい」自分を隠すため。サヤは、今までずっと自分を否定して生きてきたのだと思うと悲しすぎます。
土壇場で自分を愛せなかった緒方に対して「はじめて男の人にギュッとしてもらったり、キスできた。ずっとしてみたかったことできてうれしかったよ。ありがとね」と笑顔で礼を言う。本当はすごく傷ついているはずなのに、押し殺した心を思うと、いじらしくて泣けてきます。
「もう、早く、誰かサヤを幸せにしてくれ!」そんな気持ちで読むこと間違いなし。緒方がサヤに惹かれたように、この本を読むにしたがって読者の自分もサヤのかわいさ、いじらしさに惹かれていく、そんな本です。
この後、緒方とサヤがどうなったのかは、実際に読んで見届けてください!